会社が成長する中で、縦割り組織が課題に

株式会社アヴァンティスタッフは、みずほ銀行や丸紅と強固なつながりを持つ総合人材サービス企業です。1984年設立の前身である日本キャリエールと1986年設立の丸紅パーソネル・サポートが、2002年に合併してアヴァンティスタッフが誕生。2019年のパーソルテンプスタッフによる子会社化でパーソルグループの一員となり、2024年9月27日に創立40周年を迎えました。

同社は、人材派遣、人材紹介、教育研修、BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング)などの人材関連サービスを幅広く提供。取引社数は1300社以上に達しており、主力の人材派遣事業では、長期就業派遣スタッフ数が4500名(2024年3月時点)を超えています。

人材紹介事業においては、能力や経験を重視したミドルシニア世代を主体に、管理職などハイクラス層を中心にサービスを展開。教育研修事業では、一般研修と語学研修、両方のサービスを提供しています。加えて近年はBPO事業にも注力しており、金融機関向け業務のほか、一般企業の経理や財務の業務も請け負っています。

このように事業を順調に成長させてきたアヴァンティスタッフですが、合併で生まれた会社ということもあり、縦割りの組織体制となってしまっていたため、マネジメントが硬直化しやすい点に課題を感じていたと、アヴァンティスタッフの黒川良太氏は明かします。

株式会社アヴァンティスタッフ
代表取締役社長
黒川良太氏

「私はテンプスタッフ出身で、着任したのは6年ほど前ですが、当時気になったのは部門間に壁があり、コミュニケーションや連携がスムーズではない点でした。この体制はトップダウンでのビジネス展開には非常に有効ですが、それゆえ従業員一人ひとりの主体性が発揮できていない印象でした。加えて、部門を越えたやり取りがしづらく、隣の部署は何をやっているのか、よくわからないということもありました」(黒川氏)。

「価値を再確認し、前に進むため」の周年イベント

こうした企業風土を変化させるために、アヴァンティスタッフではこれまでに様々な取り組みを行ってきたものの、道半ばの状態でした。その結果、部門間の連携不足で、問題の解決に時間がかかったり、現場主導による取り組みもなかなか進まなかったといいます。

「私が入社したのは2004年とアヴァンティスタッフの設立直後で、部門ごとの縦割りが当たり前だとずっと思っていました。今になって思い返してみると、従業員それぞれが、主体性を発揮しづらい組織だったのかもしれません。親会社や直属の上長を見て、それに従って仕事をしていればよかったわけです」と、アヴァンティスタッフの藤野勝行氏は振り返ります。

株式会社アヴァンティスタッフ
経営企画部 戦略企画室 室長
藤野勝行氏

同社は、こうした課題を解消する取り組みの一つとして、創立40周年を記念するイベントを活用することにしました。「当社は人材業界において、相対的にもかなりよいポジションを獲得できています。メガバンクや総合商社において、人材派遣大手各社が多数参入していますが、私たちは一定のシェアを得られており、存在感が示せているからです。その立ち位置を支えているのは、他ならぬ現場の従業員なのですが、当の従業員はそれを十分に認識しておらず、『うちなんて』とやや下を向きがちな傾向がありました」(黒川氏)。

そこで創立40周年記念イベントを、自分たちの価値を再認識してもらう絶好のチャンスととらえ、部門を越えた会社全体での一体感醸成を目的にすえました。社内にいる仲間たちとアヴァンティスタッフの未来を共有することで、前向きに仕事に取り組む機会にしようとしたわけです。

「現場で自身の業務に集中してしまうと、何のためにやっているのかが曖昧になりがちです。そうすると、周囲の評価もわからなくなってしまうので、今回の40周年イベントで、自分たちがやっていることやその価値を再確認するという狙いはとてもよいと思いました」と、アヴァンティスタッフの竹中瑞穂氏は話します。

株式会社アヴァンティスタッフ
経営企画部 戦略企画室
竹中瑞穂氏

企業理解を踏まえた提案に「自然とワクワクした」

創立40周年記念イベントの実施にあたり、複数のブランディング支援会社から提案を受けたといいます。当社の提案では、仕事への実感値が低く、会社としての一体感が感じづらい現状を変えるべく、「ともに前へ! みんながつくる未来への一歩!」をテーマとして掲げました。これは、自分たちの仕事の価値を改めて認識し直し、組織全体で未来に向けたモチベーションを高めることを狙っています。

それを体現するためにプログラムは、第1部の式典「感謝を伝え、未来を描く」と第2部の懇親会「仲間を知り、未来へつなぐ」の2部構成としました。中でも、キラーコンテンツになったのが、顧客企業やスタッフからの「ありがとう」という感謝の言葉を集めた記念ムービーと第2部で実施した全員参加型のアート制作です。同社が40年間提供してきた価値を、従業員に実感してもらい、未来に向けて一体となれるコンテンツを企画しました。

「各社の提案を並べて見ても、正直、それほど大きな違いはありませんでした。ただその中で、揚羽さんが他と決定的に違っていたのは、当社の特徴と抱えている課題をきちんと理解、かみ砕いた上で提案してくれたことでしょうか。そのため提案を聞くだけで、自然とワクワクする感覚を持ちましたし、『あなたたちはどこに行きたいのか』と問われているとも感じました」と黒川氏は語ります。

プロジェクトが始動してからも、コンセプトメイクからスピーチの内容やちょっとした言葉の使い方、細かな順番など、イベントプランを磨き上げました。「プロジェクトの担当者として、何がベストかを一生懸命考えながら、思いを込めて、準備を進めました。もちろんアヴァンティスタッフの皆さんのご協力があったからこそですが、非常によい周年イベントになったと思います」と、揚羽の宮田夏音は微笑みます。

株式会社揚羽
制作第1部 プロジェクトマネジメント1グループ
宮田夏音

提案からイベントの開催に至る行程もスムーズで、大きな問題もなく、イベント開催当日を迎えることができました。「揚羽さんはプロジェクトマネジメントのやり方が秀逸で、事前にちゃんとバッファを読んでいて、私たちサイドの進行が遅れても、計画通りに準備を進められました」(藤野氏)。

「私はプロジェクトに途中から参加したこともあり、今、何をすべきか判断に迷うこともありました。そんな中で揚羽の皆さんが、とても丁寧にタスクや次にやるべきことについて説明してくれたので、安心して取り組むことができました」(竹中氏)。

密な社内コミュニ―ケーションを成長の原動力に

こうした準備段階を経て40周年記念イベントは、計画通りに開催できました。これまでの同社の周年イベントは懇親会のみで、会社のための行事という側面が強かったようです。それに対して今回は、記念ムービーの上映などで、アヴァンティスタッフの従業員一人ひとりが顧客からきちんと評価、感謝されていることを再認識でき、“自分たちのための周年行事”だという印象を持った従業員が多かったといいます。

「今回、部門の壁を取り払い、会社全体が一つになったイベントの盛り上がりを実際に体験したことで、『こんな盛大なイベントができる会社になったんだ』と参加者からもポジティブな反応が多くありました。これを聞いて、40周年記念イベントは成功したなという確信が持てました」と黒川氏は力を込めます。

「我々がお手伝いした創立40周年記念イベントを通じて、アヴァンティスタッフの皆さんが自社の価値を再認識されたと思います。当社としては、その経験を事業発展につなげていくためにも、引き続きインナーコミュニケーションなどの支援をしていきたいと考えています」と揚羽の玉手涼介は話します。

株式会社揚羽
ブランドマーケティング第1部 ブランドマーケティング1グループ
玉手涼介

今後、人材不足はますます深刻化することが予想されますが、アヴァンティスタッフでは、人材派遣、人材紹介、研修、BPOなど、顧客企業のニーズに応えて、各事業の連携を加速させていきます。また、派遣スタッフの活躍ぶりや顧客の評価を社内に取り込んで共有し、インナーコミュニケーションの強化を、企業成長の原動力にしていく考えです。